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骨腫瘍、軟部腫瘍、軟部肉腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、
  軟骨肉腫、悪性線維性組織球腫、手足のがん

骨軟部腫瘍とは

骨組織や筋肉や脂肪などの軟部組織に生じた腫瘍を総称した名称です。また骨組織と軟部組織に生じた腫瘍を分けてそれぞれ骨腫瘍、軟部腫瘍と言います。

骨腫瘍と軟部腫瘍はそれぞれ良性、悪性に分類します。様々な骨腫瘍のうち良性の腫瘍を一括して良性骨腫瘍と呼び、一方悪性の骨腫瘍を一括して悪性骨腫瘍と言うこともあります。同様に軟部腫瘍でも良性腫瘍を総称して良性軟部腫瘍、悪性を悪性軟部腫瘍と分類します。
悪性腫瘍が、骨組織と軟部組織に原発したものを肉腫と言い、その発生した組織により骨の肉腫と軟部肉腫に分類されます。
一方、悪性の骨軟部腫瘍の中には発生した母組織が骨や軟部組織ではなく他の臓器(例えば消化器や肺など)の癌が飛んできて (転移という)腫瘍を形成する場合が有ります。このような骨や軟部の悪性腫瘍を続発性(転移性)骨・軟部腫瘍と言い、逆に骨軟部に最初から発生したものを原発性骨・ 軟部腫瘍と言います。続発性骨腫瘍の場合、肉腫が転移することもありますが頻度的には内臓癌の転移が圧倒的に多いのでこの場合癌の骨転移ということもあります。

良性と悪性の違い

良性腫瘍とは、発生した部位から離れた部位へ転移することのほとんどない腫瘍を言います。また、手術で腫瘍内にメスが入っても腫瘍が散らばる(播種する)ことは有りません。

逆に悪性腫瘍とは、転移を起こし得る腫瘍を言います。また手術で誤ってメスを腫瘍に切り込むと容易に腫瘍が散らばり、その後の治療を大変困難にします。また腫瘍は周囲の組織に深く浸潤する傾向がありより大きな切除を必要とします。悪性腫瘍には肉腫とがんがあります。肉腫とは骨や筋肉・脂肪・神経などの軟部組織に生じる悪性腫瘍で体表と交通のない部位に生じますので非上皮性腫瘍とも言います。肉腫は肺転移を起こしやすい腫瘍ですが、一部の肉腫ではリンパ節転移やスキップ転移を起こしやすいことが知られています。一方、皮膚癌・消化器癌、子宮癌、乳癌、肺癌などは体表につながる管の上皮細胞や腺細胞に生じますので上皮性腫瘍と言い、むしろリンパ節転移を起こしやすい傾向があります。

実際の腫瘍では、悪性の中でも悪性度の高いものから悪性度の低いものまで有り良性でも悪性に近い腫瘍の浸潤性を示す良性腫瘍があります。そのため一部の腫瘍では悪性か良性かの診断は必ずしも容易ではなく、治療に際しては実際の手術に先立ち経験豊富な治療医と病理医による正確な腫瘍の性質に対する判断が必要となってきます。
このような良悪性の境界に位置する腫瘍として、骨巨細胞腫、デスモイド、隆起性皮膚線維肉腫、孤立性線維性腫瘍などがあります。

症状と自己診断法

骨軟部に発生する腫瘍もどきの病変は少なくありませんが、肉腫の頻度は決して多いものでは有りません。そのため、一般には患者も医師もあまり悪性腫瘍を考えることなく放置していることが多いようです。診断の遅れや良性と間違って行った治療が肉腫の治療成績を不良にしているのが現実です。
そこで、以下のような症状が有りましたら一度癌研を受診してください。

骨腫瘍の症状
1.手足の一部が腫れている。その部を押さえても痛みはない。触ると熱を持っている。
2.手足の関節が曲がらなくなる。
3.些細な外傷で骨折が起こる。骨折が起こりそうになると痛みが生じる。
4.他の病院で骨腫瘍の疑いが指摘された。

軟部腫瘍の症状
1.手足の筋肉にくるみ大以上の無痛性腫瘤を触れる。進行したものではこぶし大からバレーボール大に達するものもある。
2.腫瘍部は腫れて触ると熱を持っていが通常押さえても痛みがない。
3.大きくなると表面がテカテカ光沢を示したり、静脈が浮き出てくる。
4.腫瘍は触るとよく動くが基底の骨や筋肉に浸潤すると動きにくくなる。

骨腫瘍の種類と特徴

原発性骨腫瘍には良性と悪性があり主な腫瘍について簡略に説明します。

良性骨腫瘍
播種、転移のリスクの無い腫瘍です。

1.骨軟骨腫(外骨腫とも言う)
小児期頃から気付くことの多い腫瘍です。
手足の長い骨(長管骨)の両端にキノコ状〜台形の骨の膨隆を示します。病巣の先端は軟骨組織が覆いこの部を軟骨帽と呼ばます。軟骨帽の下には骨髄があり基の骨髄とつながっています。身長が成長している間は腫瘍も大きくなりますが、成長の停止と共に腫瘍の発育は止まり軟骨帽は薄くなります。多発性に全身骨に生じる場合と単発の場合があります。 まれに軟骨肉腫や骨肉腫が生じ、成人で軟骨帽が2センチ以上あったり、腫瘤が大きくなったりする場合は悪性化が疑われます。
しかし、悪性でなければ患者さんが不自由を感じ無い限り治療は必要でありません。手術を行う際には軟骨帽を全て切除すると再発しません。

2.内軟骨腫
手足の小さな長い骨(長管骨)に生じる軟骨の腫瘍です。
腫瘍部はレントゲンでは骨が円形〜楕円形に吸収されて見えます。大きな長管骨に生じこともありこの場合は発見が遅くなるため病巣は大きく内部に石灰化 を示す様になっています。この場合はレントゲン像では軟骨肉腫と区別がつきません。手足の指の場合は、手術は痛みや骨折が生じたときに行いますが、大長管骨の場合 は、悪性の可能性を払拭するために症状が無くとも行います。手術は掻爬と自家骨骨あるいは人工骨移植を行います。

3.軟骨芽細胞腫・軟骨粘液線維腫
肩の近くの上腕骨、股関節近くの骨盤、大腿骨に骨吸収を伴った境界明瞭な病巣を形成します。
前者で内部に石灰化を示すことがあります。通常痛みなどの症状が生じて発見されますので、骨折を予防と診断確定のために手術を行っておいた方が安心です。治療は掻爬と自家骨あるいは人工骨移植です。

4.類骨骨腫
肩の近くの上腕骨、股関節近くの骨盤、大腿骨に骨吸収を伴った境界明瞭な病巣を形成します。
前者で内部に石灰化を示すことがあります。通常痛みなどの症状が生じて発見されますので、骨折を予防と診断確定のために手術を行っておいた方が安心です。治療は掻爬と自家骨あるいは人工骨移植です。

5.骨芽細胞腫
小児の背骨に生じることの多い腫瘍です。
頻度は少なく病巣部では骨が膨らみ内部は骨が吸収されて見えます。類骨腫よりも大きく骨膨隆像を認めますが顕微鏡の所見では類骨腫と区別できません。治療は病巣部の十分な掻爬か切除を行います。骨欠損が生じれば適宜自家骨や人工骨移植します。

6.線維性骨皮質欠損・非骨化性線維腫
前者は小児にみられる腫瘍様の病変で膝関節から少し離れた骨端部に生じる径1センチくらいの泡状の小さな骨吸収性病変です。
治療の必要はなく定期的に診察を受けるだけで様子を見ます。多くは自然に治癒します。後者は同じ部位に生じ時間と共にゆっくり大きくなります。痛みがでてくると骨折の全長ですから掻爬、骨移植が必要です。

7.孤立性骨嚢腫
小児に発生する黄色い漿液のたまる病変です。最初は骨の成長線に接していますが、年齢を長ずるにつれ骨の中心部の移動します。
しばしば、腫瘍の存在に気づかず、野球などで腕を使った時に骨折を起こし医師を受診します。治療は、成長線に病巣が接しているときにはシャント療法を行います。この時期に十分な掻爬を行うと骨の成長障害を起こします。逆に成長障害を避けようとすると掻爬が不徹底となり再発を繰り返すことになり、いずれにしろあまり徹底した治療は得策ではありません。

そこで当科で考案されたのがシャント療法です。これはこれは病巣の中にチューブを設置し、骨内に貯まった組織液を骨外に誘導する治療です。チューブが詰まらなければ病巣部に次第に骨が形成され治癒します。しかし、約半数は、一時的に骨吸収が改善しますが、やがてチューブが閉鎖すると再度骨の吸収が進んできます。この際、シャント療法 の傷跡は小さいため再度同じ手術を繰り返すことにさほど問題はありません。また、骨吸収がある程度改善していると、骨折の危惧から解放されますのでそのまま病巣が成長線から離れる時期を待つ事ができます。

腫瘍が骨成長線から離れてからの手術は、掻爬を徹底し十分な自家骨や人工骨で骨欠損部を充填するが大切です。

8.線維性骨異形成
骨にスリガラス状のレントゲン所見を示す骨病巣を形成します。
骨が砂ゴム状の固さとなるため大腿骨などに生じると大腿骨の股関節側が次第に曲がってきます。この変化は羊飼い杖に似た骨変形ですから羊飼いの杖変形として有名です。
しかし、治療は骨変形が生じる前に行う事が大切で、その手段として骨の弱い部分を金属棒やプレートで補強し病巣部を除去することは必ずしも行いません。 ただし、下腿骨特に脛骨の皮質に同様の病変が生じると骨化性線維腫と呼ばれることがあります。
この病変は時にアダマンチノーマと言う悪性度の低い肉腫成分を認めることがありこの場合は安全を期し病巣を完全に切除することにしています。また、この骨病巣が多発性に生じたり、皮膚のカフェオレ色の母班、ホルモンの異常(多くは性早熟)を伴って発現することがあります。
このような病態をアルブライト症候群と言い、骨変形や二次的悪性腫瘍(骨肉腫など)が生じることがありますので定期的診察が大切です。

9.ヒスチオサイトージスX
小児に生じる骨変化です。
頭の骨や骨盤の骨にたくさん穴があいたような吸収像を示す病変ですが、手足に生じることも少なくありません。骨が折れそうな場合は掻爬骨移植を行いますが、手術の難しいときは生検を兼ね簡単な掻爬を行うだけでやがて自然治癒します。
孤立性と多発性の場合があり骨病変だけであれば骨好酸球性肉芽腫 とよびます。骨以外の症状を伴う例として、多発性骨変化にホルモン異常や尿放症を合併したり、さらに重篤な内臓障害を伴う例が存在します。

10.骨ガングリオン
関節の近くの骨が円形に欠けた所見を示します。
関節の気づくこと多い病変です。骨吸収部には薄い膜がありその中にはゼリー状の粘ちょうな液体が溜まっています。多くは治療をせず様子を見ますが手術を行う場合は掻爬、骨移植を行います。

11.巨細胞腫
大腿骨・脛骨・上腕骨・骨盤などに大きな骨吸収と破壊を生じてくる腫瘍です。
大部分は良性で転移することはありませんが、約10%に転移を生じ良悪性の境界に位置する腫瘍です。再発性が強く、掻爬する際には徹底した掻爬とアルコール処理を行います。この際骨欠損部にはセメントなどの人工骨を充填します。
骨の破壊が強く広い範囲におよぶと罹患骨部の保存が困難となり人工関節で弛緩せざるを得ない場合もあります。部位によっては血管柄付き腓骨移植を実施することもあります。手術の再発率は約10%で、この場合再度の手術が必要となりますが最終的には完治します

悪性骨腫瘍
播種・転移のリスクのある腫瘍です。

1.骨肉腫
小児から思春期に発生する最も代表的な悪性腫瘍で膝周囲の骨に高い頻度を示します。
腫瘍が骨を作る性質があり骨形成が強いと病巣部が白くなって見えます。また罹患骨が不規則に吸収されることもあります。病巣の表面には霜柱状あるいは細い針のような骨反応(スピクラ)を示すと診断は容易です。肺転移のリスクが高く、発見時に80%の患者さんには隠れた転移があると言われています。そのため、診断がついたらできるだけ早く化学療法を行い、手術前に潜在性転移を撲滅する治療が必要です。

化学療法の成果は、時代と共に向上しており現在75%の方が長期生存可能となっています。さらに、最近の研究では化学療法が著効した場合の生存率は約90%に達し無効例では60〜70%です。患肢温存は約90%の患者さんに実施しています。
化学療法の効果は、画像検査と組織検査によって評価しています。画像的には、化学療法が有効であると腫瘍は小さくなり、レントゲンで白く骨形成が進み、腫瘍境界も明瞭となってきます。治療に際してはさらにCTやMRIも効果判定に役立ちます。

手術に際しては、化学療法の効果、腫瘍の広がりを画像的に総合的判定し切除範囲を決定します。同時に患者さんに最も適した再建法の選別も必要になってきます。しかし、治療の基本は病巣が進行する前にできるだけ早く治療を開始することです。そのためには、膝の周囲に痛みが続くとき、早い時期に近医でレントゲンを撮ってもらい、異常なしと診断されても痛みが続けば放置しないで再度レントゲン検査を行い比較してもらうことが大切です。最初異常が無いと言われて、1月後にははっきりと異常が判ることがあるからです。

2.傍骨性骨肉腫・骨膜性骨肉腫
骨の表面に発育する悪性腫瘍で成人から中年に発生します。
性格は比較的おとなしく一般に手術だけで十分治癒します。前者では骨周囲に累々とした骨の塊が存在するような所見を示します。

後者では骨肉腫に似た所見を示しますが両者とも骨髄内に病巣がないのでCTやMRIで通常の骨肉腫と容易に区別できます。前者では転移がない限り化学療法を行うことはありません。後者では化学療法を行うこともあり時に有効な反応を示すこともあります。手術では通常の骨肉腫より多少少ない範囲の手術を行います。

3.悪性線維性組織球種
骨肉腫より頻度は少ない腫瘍で、成人に発生します。
治療は骨肉腫に準じた治療を行いますが、化学療法への反応は骨肉腫よります。

4.脊索腫
中年以降の仙骨に生じる悪性腫瘍です。
症状が少なく来院時に巨大になっている事が多く難しい手術が必要となる腫瘍です。

治療は、仙骨部の切除が行われます。仙骨神経の障害が強い場合は人工肛門などの手術が必要となります。そのためできるだけ早期に発見し手術を行うことが大切で、お尻の周りにいつも痛みやしびれを感じる場合は当科に一度受診されることをお勧めします。

5.ユーイング肉腫
10歳以下から10代に発生することの多い悪性腫瘍です。
腫瘍の広がりが大きく、効果も期待できるため通常術前に十分な化学療法を行い、続いて手術を実施します。術後は当然1年間の化学療法を行います。またこの腫瘍は放射線にもよく反応します。しかし、通常放射線を実施することはありません。 放射線治療では後日骨壊死、皮膚障害、放射線照射後肉腫が生じ結局患肢温存には役立たないからです。

治療法は骨肉腫に準じますが、小児の場合患肢を温存しても、残した足の成長が止まり足の長さが左右異なってきます。そのため、足を残した場合はこの問題を解決するために、様々な治療が必要となってきます。

6.アダマンチノーマ
脛骨に生じる比較的おとなしい悪性腫瘍です。多くは広範囲切除と骨移植で治療します。化学療法は行いません。

7.軟骨肉腫
中年以後の悪性腫瘍です。
性格は骨肉腫ほど転移を起こしませんがひとたび転移が生じると化学療法の効果が期待できない分、治療はやっかいです。それだけに、最初の手術は大切で多少の機能的犠牲を払っても根治的手術を目指す必要があります。またこの腫瘍は骨盤、仙骨や背骨にもしばしば発生します。この部位は手術的に安全な切除縁が確保しがたいことが多くこの場合手術に際し術前に放射線を併用せざるを得ないこともあります。

軟骨肉腫の中にはいくつかの異なったタイプのものがあります。特に間葉性軟骨肉腫、淡明細胞型軟骨肉腫などで転移リスクが多少高く注意を要します。

軟部腫瘍の種類と特徴

良性軟部腫瘍
良性腫瘍は、一般に発育が遅く症状が無ければ放置しても問題は有りません。症状がでたり、大きくなると手術に困難が生じそうな場合に手術を行います。手術では腫瘍部 を取り残しが無いように確実に摘出しさえすれば、腫瘍をいくつかに分割して切除しても播種は無く再発したり転移することは有りません。以下に主な良性腫瘍の性格と 治療法を簡略に説明します。

1.血管腫
生まれつきの血管の異常による疾患である。皮膚や皮下など浅い部位の病巣は発見が早く乳児・小児期に発見され赤〜紫色の皮膚変化を伴う病巣を形成します。筋肉など深 い部位の病巣では、痛みがでてきて外来を受診し初めて診断だつきます。したがって発見は10代から成人になってかとなります。病巣部は柔らかく腫瘤として触れにくく 全体が腫れて触れ、腫れや腫瘤の大きさが日によって変化するのもこの疾患の特徴です。美容上あるいは機能的に問題がなければ湿布、弾性ソックス、鎮痛剤などの保存的 治療で十分です。したがって手術は強い痛みが生じたり機能障害が生じた場合に限り行います。

2.脂肪腫
成人に多い柔らかい腫瘍です。腫瘍が浅いところに生じた場合は柔らかに触れますが深いところに生じると堅く触れることもあります。腫瘍はCRやCTで脂肪独特のX線 透過性を示し診断は容易です。腫瘍は正常の脂肪と同様に黄色で薄い被膜で覆われ腫瘍部は周囲の脂肪から境されています。美容的に問題がなければ手術の必要は有りま せんが、腫瘍が大きな場合は悪性度の低い分化型脂肪肉腫のリスクがあり手術的に摘出するか、細胞診で診断を確かめた方が無難です。

3.脂肪芽細胞腫
幼児や小児の脂肪腫と似ている良性腫瘍です。特に大きくなければ様子をみていると通常の脂肪腫と同じ経過を示し、手術の適応も脂肪腫に準じます。

4.神経鞘腫
成人に生じる球状の腫瘍で多くは圧迫すると神経に沿って放散痛が生じます。腫瘍には1センチくらいの小さいものから20センチ以上のものまであります。腫瘍は細 い神経線維に連続しています。手術で神経を障害にないためには、腫瘍を取り巻く神経を保存し腫瘍に連続する神経線維のみを切離し腫瘍を摘出することがポイントと なります。造影CTやMRIで特徴的所見が認められると画像だけで診断ができます。

5.神経線維腫
成人に生じる球状の腫瘍で多くは圧迫すると神経に沿って放散痛が生じます。腫瘍には1センチくらいの小さいものから20センチ以上のものまであります。腫瘍は細い神経線維に連続しています。手術で神経を障害にないためには、腫瘍を取り巻く神経を保存し腫瘍に連続する神経線維のみを切離し腫瘍を摘出することがポイントとなります。造影CTやMRIで特徴的所見が認められると画像だけで診断ができます。

6.滑膜骨軟骨腫
関節内に大小様々な球状の軟骨組織が増殖している病変です。滑膜組織の中から発生し関節の中であたかも真珠の様に大きくなります。この固まりが関節の間に挟まると強い痛みが生じます。しかし、そのような症状が無ければその存在に気づくことなく多数の軟骨病巣が集まり大きな固まりとなることもあります。治療は骨軟骨腫の摘出しかありませんが良性ですから痛みがなければ手術を急ぐ必要はありません。

7.平滑筋腫
深部に生じると、組織検査なしで診断は困難ですが皮下の脂肪組織に生じた血管平滑筋腫は数ミリから数センチの大きさで腫瘍はわずかな刺激で腫瘍周囲に電気が走るような特有の痛みが生じます。類似の症状はグロームス腫瘍でも生じますがこの場合は指の爪の下に生じ多くは数ミリの小さい腫瘍です。

8.腱鞘巨細胞腫・色素性結節性絨毛滑膜炎
手や足の腱周囲の腱鞘滑膜内に生じたものには前者の名称、膝や股関節など大きな関節内に生じているものには後者の名称が使われます。しかし、本態は同じ病変と考 えられています。前者の腫瘍は手足の腫瘤ですが固さは固いものからクリクリしたものからフワフワした柔らかいものまであり、治療は摘出で十分です。後者の場合は 関節全体が柔らかに腫れて触れます。症状は原因不明の関節内血腫を長期に訴えていることが多く、このような場合は一度専門医を受診することをお勧めします。診断 に時間がかかることが多いため腫瘍の浸潤は靭帯の付着部から骨内に及んでいることが少なくありません。この場合通常の腫瘍摘出では再発を繰り返す結果となり、場 合によっては人工関節置換などを考慮する必要が生じてきます。摘出した腫瘍は、通常固い黄色い塊であたかもアン肝の様な外観を呈します。膝や股関節などの病変は、 黄色い塊状の病巣とヘモジデリンが貯まり暗紫色に増殖した滑膜から構成され滑膜増殖部は肉眼的にモズクの様な様相を示します。

9.デスモイド
若年者から40歳くらいまでの患者さんにみられる腫瘍で白く固い線維組織から成る病巣を示します。発育は比較的ゆっくりしていますが、触ると腫瘍は固く多くは岩 を触るような歪な感じがあります。また腫瘍部を強く押さえると痛みを伴うことが多いようです。発育が緩徐なため気づくのも遅く発見時に10〜20センチの大きさ に達していることも少なくありません。診断の決め手は針生検・細胞診を含む組織検査です。治療は手術による切除が原則ですが、表面の丸い腫瘍では再発性は低くコ ツゴツした不整形の腫瘍では再発性が高く機能に重大な影響を生じない程度でより大きな切除を行う必要があります。しかし、腫瘍は良性ですから悪性腫瘍のように広 範切除を行う必要はありません。そのため、血管や神経など重要な組織が腫瘍に接する場合はまずそれら組織を腫瘍から剥離しその保存を図った上で腫瘍の取り残しが 無いような切除手術を行います。しかし、このような場合、再発を繰り返すことも少なくありません。再発した場合は、様子を見ながら根気よく手術を行う必要が有り ますが、幸い多くの場合は数度の手術で再発性が低下します。これには患者さんの加齢やホルモン環境の変化も関与していると指摘されており将来治療の糸口になるか もしれません。

10.隆起性皮膚線維肉腫
皮膚が光沢のある赤紫に腫れ上がった腫瘤を形成し発見しやすい腫瘍です。大きくなると皮膚が破れザクロの様に腫瘍が飛び出し出血してきます。手術は、悪性腫瘍と同 様に広範切除を要しますが転移例は極まれで再発性も高くはありません。転移例はおおむね巨大になるまで放置した例ですから、数センチの腫瘍が小さい時期に確実な手 術を行っておけば生命へのリスクほとんどしなくて良いと考えています。そのため、ここでは良性と悪性の境界領域の腫瘍としてこの項に記載しました。

悪性軟部腫瘍
播種や転移のリスクの高い腫瘍で手術は治癒的広切の原則に従って行うことを原則とする腫瘍です。そのため初期治療の失敗は患者さんの命に重大な影響を与える点で特に専門的治療を要する疾患と言えましょう。しかし、ここに含まれる腫瘍には様々な悪性度の腫瘍が含まれており、その性格に応じ切除範囲や化学療法にきめ細かな対応を要する腫瘍と言えましょう。

1.悪性繊維性組織球種
軟部肉腫の中で最も頻度の高い腫瘍です。中年以降に好発し高齢者の軟部肉腫をみた場合この診断名をつければ大部分当たるくらいです。診断の決め手は組織診断ですが細胞診で多形性細胞肉腫と診断された場合おおむねこの腫瘍です。いくつかのタイプがあり悪性度の低いものと高いものがあります。筋肉に沿って特に浸潤傾向が強いタイプがありMRIなどでそれが疑われる場合、より徹底した切除が必要です。10年生存率は約70%です。

2.脂肪肉腫
中年以後に頻度の高い腫瘍です。脂肪腫に似た外観を示す分化型脂肪肉腫、粘液型、円形細胞型、たけい多形細胞型など異なった性格の腫瘍があり、前2者は悪性度が低い腫瘍です。分化型脂肪肉腫は画像的に脂肪腫と鑑別できない腫瘍があり、また良性として切除しても再発に長時間を要しかつ転移も生じない例があります。このような腫瘍は今後境界領域の腫瘍として扱うべきかもしれません。粘液型も経過は良好です。しかし、これに円形細胞が混在する円形細胞型となると多形細胞型と共に転移率が高くなります。後2者では転移を予防するために化学療法を行います。10年生存率は約90%です。

3.滑膜肉腫
関節の近くに生じることの多い軟部肉腫ですが関節の中に生じることはありません。しばしば、レントゲンで腫瘍部に石灰化を認めたり全体が血腫状になることなる腫瘍です。悪性度の高い腫瘍と考えられています。10年生存率は70%です。

4.平滑筋肉腫
大きな静脈壁に生じた場合、隣の動脈を完全に取り囲むように発育しているのがある腫瘍です。悪性度は、組織の分化度により大きく異なります。

5.横紋筋肉腫
小児に多い腫瘍で、リンパ節転移や肺転移の頻度も高い腫瘍です。悪性度の高い腫瘍で手術前から化学療法を行います。小児例では化学療法の効果が期待でき、リンパ節転移がなければ治療成績は良好ですがリンパ節転移の有る場合はより長期の術前化学療法を行い手術では転移部を含めて病巣を切除します。

6.血管肉腫・血管外皮腫
臨床的に特徴はありません。前者はすべて悪性度が高い腫瘍として扱いますが後者の方が組織学的に悪性度に差異があります。皮膚に多発性に生じる皮膚血管肉腫では、患肢温存手術後の再発率が高く切断術がもっとも安全な手術と考えています。

7.リンパ管肉腫
乳ガンなどでリンパ節郭清や腋窩部への放射線治療を行うと上肢が腫れ浮腫状となることがあります。このリンパ浮腫が長期に続いた上肢に腫瘍が発生した場合まずこの腫瘍を疑うべきです。治療は切断が原則です。

8.神経肉腫
神経線維維腫(レックリングハウゼン氏病)に合併するものと、全く関係なく生じてくるものがあります。後者の場合、組織診断を得るまで診断は困難です。しかし、レックリングハウゼン氏病の患者さんに急に大きくなる腫瘍が生じたらまずこの疾患を疑うべきです。

9.悪性神経上皮腫・軟部ユーイング肉腫
両者は同一の病変と考えられています。大きな神経に生じることがありこの場合は画像的には神経肉腫と鑑別できません。通常化学療法へ期待ができるため術前に化学療法を行いその反応を評価して手術を実施します。

10.骨外性軟骨肉腫
レントゲンで腫瘍に石灰像を示す事の多い腫瘍です。石灰化所見は間葉系軟骨肉腫と通常型の軟骨肉腫に認められ粘液型軟骨肉腫では認めません。化学療法や放射線療法にあまり反応しません。そのため手術による十分な切除が重要となります。

11.骨外性骨肉腫
レントゲンで軟部の腫瘍内に強い骨化像を認めた場合にこの腫瘍を疑いますが診断は組織学的に腫瘍細胞が骨形成する所見がある時に確定します。悪性度は高く十分な化学療法が必要です。

12.胞巣状軟部肉腫
血管の豊富な腫瘍で、しばしば腫瘍が拍動して触れます。聴診器などを腫瘍に当てるとザー、ザーと血液の流れる音が聞こえることもありま。発見時にすでに肺やの脳に転移していることもありますが、最初に転移を認めなければ転移を生じることは較的少なく10年生存率は70%です。化学療法の効果は期待できず通常行いません。

13.類上皮肉腫
手足に血豆状の病巣を形成し時に自壊を示す腫瘍です。同一肢に多発性の病巣を生じてくることが多く化学療法の効きもあまり期待できません。そのため手術が重要ですが、患者さんの了解が得られれば切断が勧められます。

14.明細胞肉腫
深部の黒色腫である。再発や転移の傾向は類上皮肉腫に類似しています。

転移性腫瘍の特徴と治療

他臓器の癌や他の部位の肉腫が骨に転移した場合を転移性腫瘍と呼びます。原発部としては乳癌、腎癌、前立腺癌、子宮癌、消化器癌、甲状腺癌などど この癌でも骨に転移する可能性が有ります。そのため、癌に罹患した場合手足や躯幹に頑固な痛みがつずく場合は、主治医と相談して骨転移の検査をしてください。特に乳 癌の骨転移の頻度は高く、乳癌を治療した患者さんは10年以上にわたり骨転移のチェックが必要となります。整形外科的な骨転移の治療としては、骨折に対する治療と麻 痺に対する治療になります。すなわち、癌転移により骨折が生じたり、生じそうなときに骨折予防のための手術を行います。手術ではできるだけ早く元の生活に戻れるよう に、強固な髄内釘、人工関節、骨セメントなどで強靱な骨の補強を行い術後には放射線治療を追加します。もちろん元の主治医に各癌の治療に準じ化学療法やホルモン療法 などの保存療法を実施してもらうことが大切です。また脊椎に転移が生じた際には、脊髄圧迫による神経障害が生じてきます。麻痺が急速にきた場合は早急にMRI検査を行い 手術で腫瘍による脊髄圧迫を除去する必要があります。しかし、緩徐に進んでいる場合は放射線療法を行い腫瘍の発育を押さえることができれば手術をしなくても麻痺は回 復します。麻痺発生後時間がたちますと麻痺の回復は期待できませんのでその対応には緊急性があります。手術を行った後には、麻痺の再発予防のために放射線照射が大切 です。



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